【3】不動産有効活用 | (4)管理会社活用
不動産有効活用に関する以下のQ&Aにお答えしています。
(1)時価算定 (2)活用度診断 (3)買い換え (4)管理会社活用 (5)税務申告 (6)節税対策
(4)管理会社活用の質問を表示しています。
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【Q1】 最近、不動産管理会社という名称を聞くことがあります。不動産管理会社とはどのような形態の会社なのでしょうか。
【A】不動産オーナーにとって、相続税や贈与税、固定資産税など、税負担について悩んでいる方は大勢いると思います。
オーナーご自身が税金を支払うわけではありませんが、相続が発生し、ご家族が相続税等を支払うことになった場合、決まって問題になるのは、納付する税金をどこから用立てるかということでしょう。
税金は原則的に現金納付ですから、もし現金がなければ何かの資産を現金化しなければなりません。不動産は、とくに納付する金額が大きいほど、とても有利な資産といえます。
しかし、先祖代々受け継いできた土地等を切り売りすることに抵抗を感じているオーナーも多いはずです。なんとか売らなくてすむ方法はないか、そう考える人も多いと思います。
そこで不動産を売らず、上手に活かしながら相続対策もできる方法のひとつが、不動産管理会社の設立なのです。一般的に、不動産オーナーは個人で不動産などの資産を保有しているものですが、不動産管理会社の設立により法人化することによって、個人の保有する不動産を法人がかわって維持・管理するのです。
不動産管理会社を設立するにあたっては、一括賃貸方式、管理委託方式、不動産(建物)所有方式の3つの形態があります。どの方式の形態で設立するかは、それぞれのメリット・デメリットがありますので、十分に考慮して管理会社を設立することがのぞまれます。
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【Q2】一括賃貸方式、管理委託方式、不動産(建物)所有方式の3タイプについて、簡単に説明してください。
【A】一括賃貸方式とは、不動産管理会社が、不動産オーナーから不動産を一括で借り上げる方式をいいます。
たとえば、アパート経営しているオーナーがいて、自分のアパートを不動産管理会社に一括で借り上げてもらいます。その代わり、アパートの管理・運営については管理会社が受け持つという方式です。
管理委託方式とは、不動産オーナー等が設立した不動産管理会社と業務委託契約を結び、不動産オーナーが関わる賃貸用不動産の業務を、不動産管理会社に委託するという方式です。ここでいう管理業務には、入居者の募集や賃貸借契約の締結・更新・解約等、入退出のチェックのほか、建物の清掃や修繕、保守管理などになります。一括賃貸方式に比べて、管理業務が限定されているのが特徴です。
不動産(建物)所有方式は、不動産オーナーが所有する土地や建物を不動産管理会社が取得(売買)するという形態です。不動産オーナーに入っていた家賃収入や礼金などは入ってこないことになりますが、その代わり不動産管理会社から地代などを支払ってもらうことになります。このように、3タイプにはそれぞれ特徴がありますので、ご自分の保有する不動産に最適な方法を検討し、管理会社を設立する必要があるといえます。
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【Q3】不動産管理会社を設立すると節税効果があると聞きました。それはなぜでしょうか。
【A】不動産管理会社を設立するには3つの方式があることは説明しましたが、3つに共通したメリットがあります。
それは、節税の効果を得られるということです。どのように得られるのか、以下に説明いたします。
一括賃貸方式の場合、これまで直接賃借人から入ってきた家賃収入は得られないかわりに、不動産管理会社のほうから一括賃料が入ってきます。一括賃貸の場合、賃料は通常の家賃の80~85%ほどで、差額は不動産管理会社の収入となります。不動産オーナーに入ってくる家賃収入は実際より少しだけ少なくなりますが、その差額分が節税となるのです。
管理委託方式は、不動産管理会社にオーナーご自身の不動産にかかる管理料を支払うことになります。この支払分は経費となり、これが節税に繋がるという形態です。
不動産(建物)所有方式は、不動産オーナーの不動産や建物を不動産管理会社が取得(売買)することにより、個人の資産移転を図れることや、相続税の税負担を軽減できる効果があります。
もし親族が不動産管理会社を設立したならば、不動産オーナーの所有する不動産はそのまま不動産管理会社に移転することになりますから、争族問題を回避する効果もあるわけです。ただし、この方式はすべての条件でメリットがあるわけではありませんので、詳しくは顧問税理士などに相談することをおすすめします。
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【Q4】それぞれの不動産管理会社のメリット、デメリットについて教えてください。
【A】不動産管理会社の設立により、節税効果のほか、資産移転などのメリットがあるほか、各方式にはそれぞれのメリットがあります。
一括賃貸方式では、一定した賃料が得られることにより、安定的なキャッシュフローが見込めることや、不動産管理会社から親族に対して給料として支払うことにより所得の分散ができます。
管理委託方式では、管理費が経費となるほかは、法人から役員報酬などを得ることで所得分散などのほか、保険に加入することにより損金扱いにできることによる節税効果が得られます。
不動産(建物)所有方式は、不動産収入がすべて売上になるため、役員報酬を多く受け取れることによる所得分散や、相続税の納税資金を確保することなどのメリットが考えられます。節税効果をのぞむならば、一括賃貸方式の場合ですと一括賃貸料をできるだけ少なくしたり、管理委託方式では委託管理費の金額をできるだけ増やしたいところでしょう。
ところが、税務署の税務調査で、あまりにそれらの金額が一般的に妥当ではないということで、認めてもらえない可能性もあるのです。これを否認リスクといいます。
この否認リスクを解消する方法が、不動産(建物)所有方式といわれます。不動産(建物)所有方式は、他の2方式にかかる管理費の支払比率が高いことによる税務調査の否認リスクをなくすことができることが、最大のメリットといえます。
ただし、不動産(建物)所有方式も、登記費用や建物の取得後にかかる不動産所得税が発生しますので、それぞれにメリット・デメリットがあるということを十分に考慮すべきでしょう。
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【Q5】どのような場合でも、不動産管理会社をつくったほうがメリットはあるのでしょうか。
【A】不動産オーナーにとっては、できるだけ節税効果をえられて、少しでも子供や孫たちに保有する不動産を引き継がせたいと思っていることでしょう。そのために不動産管理会社を設立することで、その効果を得たいところでしょうが、条件に合わない場合には不動産管理会社を設立してもメリットが享受できない場合があります。
そこで不動産管理会社を設立するメリットがあるかどうかについて、以下のような判断基準を設けていますのでご参考にしてください。
判断基準1 相続発生まで時間があるか?
判断基準2 相続税の納税額はいくらくらいになるのか?*将来予測も含めます
判断基準3 不動産オーナーや家族に分散できる年間の不動産所得はあるか?
この3つの判断基準に対して「ある」と答えた人については、不動産管理会社を設立するメリットが得らえる可能性が高いので、検討の余地は十分にあるといえます。もし、3つの判断基準に該当しない場合は、設立してもメリットが得られない可能性が高いので、別の対策を講じる必要があるでしょう。