【2】相続事業承継対策 | (1)生前贈与
相続事業承継対策に関する以下のQ&Aにお答えしています。
(1)生前贈与 (2)小規模宅地 (3)遺言活用 (4)保険活用 (5)信託活用 (6)自社株対策
(1)生前贈与の質問を表示しています。
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【Q1】生前贈与というのは、どのようなことを指すのでしょうか。
【A】贈与については、民法549条に「当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受託することによってその効力を生ずる」と規定しているように、相続税法や民法のような贈与税法といった法律はなく、民法に準じているのが特徴です。
このようなことから、相続税の補完税という意味合いをもっているのが贈与税といえます。民法549条をわかりやすくいうと、財産を上げる人(贈与者)と、財産を受け取る人(受贈者)との間に、「あげる」「もらう」という意思表示があって、財産が渡れば贈与になります。
生前贈与とは、贈与者が亡くなる前に、受贈者に財産を贈与することをいいます。たとえば、父子関係にある親子の間で、父親が自分の元気なうちから子供に財産を分け与えたいとすれば、これは生前贈与になります。生前贈与は、一人からもらう場合や、多数からもらう場合など色々なケースが考えられます。
相続時精算課税の贈与は、平成25年の税制改正では、親子のみの関係による贈与から、祖父・祖母から孫への贈与にまで拡大されました。これにより、生前贈与をする人がますます増えるものと思われます。
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【Q2】生前贈与にかかる税金の計算方法には、どのようなものがあるのでしょうか。
【A】生前贈与の計算方法は、暦年課税方式と、相続時精算課税方式があります。
暦年課税方式とは、1年間に贈与した金額に対して課税される方法です。具体的には、『(財産の合計額-基礎控除額110万円)×税率-控除額』という算式で出します。1年間(1月1日~12月31日)に110万円以内の贈与額であれば、贈与税はかからない計算になります。
一方、相続時精算課税方式は、2500万円までは税金の支払いを先送りできる制度です。従来は暦年課税方式だけでしたが、平成15年に設けられました。
計算方法は『(累積額-特別控除2500万円)×20%』で表します。贈与の総額が2500万円を超えた分について税金がかかってくることになりますので、2500万円以下ならば非課税となる仕組みです。どちらの計算方法を選択するかは、財産の規模や相続人との関係など、さまざまな条件を踏まえたうえで、メリットになるほうを選ぶことになるでしょう。
贈与は、相続が発生するまでに適用されるものですから、もし生前贈与によってメリットを得ようとするならば、できるだけ早い段階で贈与すると効果的といえます。
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【Q3】贈与の対象となる財産にはどのようなものがありますか。
【A】贈与の対象となる財産には、現金や株、不動産など目に見える財産のほとんどが含まれます。
また、「保険金受取人以外の者が保険料を負担していた場合」「定期金に関する権利」「低額譲り受けによる利益」「債務免除等による利益」「その他の経済的利益」「信託に関する利益」など、民法上の贈与には該当しないものの、贈与税独自の贈与財産として含まれる「みなし贈与財産」なども該当します。こうした目に見える財産だけでなく、目に見えない財産も含まれます。
たとえば、生命保険関係とか、権利関係などです。贈与するうえで、比較的非課税の活用ができる財産に、住宅資金や教育資金などがあげられます。住宅資金は、親または祖父母から20歳以上の子または孫に対して、自分が住む目的で新築、増改築する場合について資金を贈与した場合、一定金額まで非課税になります。
また、教育資金も、親や祖父母が、子または孫の教育資金として30歳まで信託等によって運用した場合に、1500万円まで贈与税がかからないという制度があります。
贈与については、相続税に比べて税率が高いという一面はあるものの、贈与の種類によっては非課税になるものもありますので、用途に合わせた活用をするとよいでしょう。
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【Q4】毎年、ある一定額を生前贈与し、贈与税を支払っています。のちのち、そのすべてが贈与として認められるのでしょうか。
【A】まず、ご質問に「贈与税を支払っている」とありますが、これはどなたが支払っているのでしょうか。
じつは生前贈与の場合、贈与税を支払うのは贈与を受け取った側、つまり受贈者になります。受贈者が贈与者から贈与を受けた資産について、毎年の確定申告の際に贈与に関する手続きをします。とはいえ、親子関係であれば、そのへんはどうしてもアバウトになってしまう可能性は十分に考えられます。こうしたアバウトさは、たとえば預金通帳などにも表れます。よく聞くのは、受贈者の名義をつかって贈与者が代わって積立などをしている場合もあるでしょう。少しでも息子さんや娘さんのために、預金をしてあげようという親心は理解できます。
さて問題は、これらの行為が贈与としてみなされるかどうかですが、税務調査の際に贈与と認められないケースもあるのです。つまり法的な贈与関係であることを証明するものは何もないからです。
また、贈与税の申告をしていたとしても、これは贈与関係を証明する理由にはならないといわれています。そこで、贈与として証明するための書類が必要になるというわけです。たとえば、毎年、いくらいくらを贈与者から受贈者に贈るという一文が書かれた贈与契約書を作成することが必要です。
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【Q5】贈与といっても遺贈、死因贈与など、色々な種類があります。生前贈与と何が違うのでしょうか。
【A】相続と贈与の違いは、たとえば、ある家族のご主人Aさんが亡くなって、そのご家族がご主人の財産を引き継いだ場合、これは相続にあたります。わかりづらいのは、死因贈与と、遺贈、生前贈与の違いでしょう。
ここでは同じく、Aさんを例にとってみましょう。死因贈与とは、Aさんが亡くなるときに子供さんに財産をあげると伝え、子供さんも合意してのちにAさんが亡くなったときに子供さんに財産がわたることをいいます。遺贈とは、Aさんが子供さんあてに遺言で「財産をあげる」と一方的に書き残し、Aさんが亡くなってから遺言どおりに子供さんに財産がわたることをいいます。
これらに対して、生前贈与とは、Aさんが子供さんに財産をあげるといって双方が合意し、Aさんが生きている間に子供さんに財産がわたることをさします。生前贈与以外は、すべて相続税が適用されます。
なお、生前贈与であっても、贈与をした後3年以内に財産をあげた側(贈与者)が亡くなった場合や、相続時精算課税によって贈与の計算をしている場合については、相続税の課税対象となります。
ただし、それまで支払った贈与税については、相続税から差し引かれることになります。
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【Q6】事業を後継者に譲るならば生前贈与するほうが得だと知人に訊かされました。実際にはどうなのでしょうか。
【A】ここでいう後継者とは、おそらく血縁関係にある経営者の子息ととらえてしまっていいと思いますが、相続対策の一環として生前贈与をすることでメリットが得られる可能性はもちろんあります。
事業承継という観点でみてみますと、ある程度の助走期間はほしいと思います。突然、会社経営をやりなさいといわれても、そう容易く経営を担うことはできるものではありません。少しずつ経験を積んで、ある程度機が熟したら後継者にバトンタッチをするのが、理想の事業承継といえます。
しかし、人生はなかなか計算通りにいかないものです。ある日突然、経営者が倒れ、後継者にバトンタッチをしなければならない場合もあります。そのような事態に陥った場合、事業を継続するに十分な資産が後継者に相続されればいいですが、争族問題にならないとも限りません。ましてや、自社株の問題、抵当権の問題、保険や従業員、遺族などの問題等々、すべての相続問題を後継者が負担する結果となります。
その結果、円滑に事業承継ができないことさえあるのです。生前贈与によって、相続時における後継者への負担を軽くすることや、相続時における争族の火種を作らないことを考えると、生前に少しずつでも資産を分けることで、後継者に円滑に承継できる環境を作り出すことができるというメリットがあることを知っておくべきでしょう。