【2】相続事業承継対策 | (4)保険活用

相続事業承継対策に関する以下のQ&Aにお答えしています。
(1)生前贈与 (2)小規模宅地 (3)遺言活用 (4)保険活用 (5)信託活用 (6)自社株対策

(4)保険活用の質問を表示しています。

  • 【Q1】中小企業の経営者です。相続問題を考えるうえで、保険の上手な活用方法はありますか。

    【A】保険には生命保険や損害保険(自動車保険、地震保険、火災保険など)がありますが、経営者が使ううえでもっとも多く使われているのが、生命保険だと思います。

    生命保険といっても商品の種類はたくさんありますので、どれが最適だとはピンポイントでいえないのが実情ですが、生命保険の活用方法について色々考えられます。

    一般的に保険を活用する要因として、もしものことを想定して入ることは当然ですが、経営者の場合ですと、保険の掛け方によって経費として落とせるというメリットがあります。いわゆる損金算入という仕組みを利用する方法です。保険の支払者をどうするのかという問題もあります。会社の経費として掛けるのか、それとも個人で掛けるのかによっても違います。

    相続問題を考えて保険を検討しているというご趣旨の質問ですので、たとえば、個人で掛けるのではなく、法人で掛けるという方法はあります。法人でかけますと、もしも経営者に何かあったときでも会社に入る仕組みになりますので、後継者が引き継ぐまでの間の運転資金にできます。

    個人ですと、相続時には相続財産になりますので、「500万円×法定相続人の数」が控除された評価額が該当します。高額な保険商品を個人でかけるよりも、法人でかけているほうがメリットはある場合もあります。

  • 【Q2】オーナー経営者で、会社で終身保険をかけています。終身保険のメリットはどのようなことがありますか。

    【A】終身保険とは、ある一定の保険金額をある一定の期間にわたって掛け続けることによって、不測の事態が生じたときに事前に取り決められた保険金を、会社が受け取れる仕組みの保険商品です。

    終身保険のよいところは、事前に取り決めた保険金額が常に一定で、変動しないということがあります。

    そして、ある一定の期間を払うと一生涯にわたって保険条件の適用がなされるというメリットが得られるところです。一生涯のことなので、もし経営者の身に何かあった場合でも、終身保険によって現金が得られますので、資金的に対応しやすくなるということはあります。

    また払込期間のさなかに金額が変動したりする、変動型定期保険などと比べると、どんな状況においても一定額であるという安心感はあります。もうひとつ、終身保険の活用メリットとしては、資金ニーズが発生したときに中途解約をすることで難局を乗り切れるということがあります。手元に資金がない場合でも、目に見えない現金をストックしている状態になっているのが保険です。

    万が一のことを考えた保険商品として活用する以外にも、資金的に厳しくなったときに現金化できるメリットが備わっている商品といえます。

  • 【Q3】相続が争族にならないために、保険を上手に活用する方法はあるでしょうか。

    【A】相続時にとくに問題になるのは、遺産分割であると思います。

    相続人が法律に従って自分の相続割合分で納得がいくならば何も問題はないのですが、被相続人との関係度合いによっては、必ずしもそうはならないことが往々にして生じます。

    たとえば、被相続人に娘が二人いたとします。二人とも嫁いではいますが、一人は実家で親と同居、もう一人は別居してかつほとんど実家と疎遠になっているといった状況だとしましょう。もし、疎遠になっている娘が法定どおりに相続遺産の分割を主張し、実家を処分しなければならなくなったとすると、親と同居していた娘は実家を出なければなりません。このような不都合が起こりうるのが、相続問題です。

    このような事態に備え、親は同居する娘名義の保険をかけておくのです。もし相続が発生しても、同居する娘名義の保険はそのまま生かされますし、現金が必要な場合は解約をすることで現金化できます。

    相続が兄弟姉妹間のトラブルを誘発する可能性は決してゼロではありませんので、少しでも残された家族の立場などを考慮することが必要です。

  • 【Q4】中小企業経営者です。将来的に息子に事業を継がせようと思っています。円満に事業承継する方法として、保険を活用することはできますか。

    【A】中小企業の事業承継でもっとも難しいのは、後継者へスムーズに事業や資産が移行できるかどうかだと思います。

    相続問題においても、ご長男に事業承継をしたいが、他の子供たちが権利を主張すれば難しくなる、という経営者の声も聞かれます。

    たとえば、ご長男に継がせようと思っていた経営者が突然亡くなり、遺産分割のときに亡くなった経営者の思い通りにご長男へ事業が継承されず、結果的に会社は倒産してしまった、という事例もあります。

    もし遺言などで、事業はご長男に継がせたいので、資産のすべてをご長男に相続させると書いてあったとしても、法定相続人には遺留分というのがありますので、遺言どおりにはならないのが実情です。

    そこで、一つの方法として、ご長男名義の生命保険をかけておくことは考えられます。経営者名義の保険ですと、相続資産の対象になりますが、ご長男名義の保険であれば、のちにご長男が継続して保険をかけていくことができます。また、中途解約することで現金にかえることができますから、保証を継続しつつ、いざのときには現金化することができます。

    会社にとっても、また、事業承継をするご長男にとっても、何かの時に役立つ保険の活用について、ご検討ください。

  • 【Q5】多額の保険に入っていても、すべて死亡時に入るものばかりです。事業承継に役立たせるほかに、生前に活用するための方法はないのでしょうか。

    【A】生命保険などに加入している経営者の多くは、もし万が一死亡したときに遺された家族や会社の従業員が路頭に迷わないためにという気持ちだと思います。

    しかし、生きているうちに少しでも自分のために還元できないか、と考える人もいるのではないでしょうか。

    確かに、多額の保険をかけているにもかかわらず、かけた保険を使えるのは経営者が亡くなったとき、というと、経営者の方にとってもあまりうれしくないことかもしれません。

    ここで使われるのは、生前に退職金として受け取れるような生命保険を活用するという方法です。後継者に事業を任せることができれば、あとはどのタイミングで退職をするかですが、なるべくならば元気なうちに退職し、その後は悠々自適に暮らしたいと思うでしょう。

    そこで、保険を活用し、退職金等に充当するわけです。ただし、保険商品によって、解約返戻金がある一定時期を過ぎると下がってしまう(逓増定期保険など)ものや、解約返戻金そのものが低く、思った以上の金額にならない場合がありますので、注意が必要です。