【2】相続事業承継対策 | (5)信託活用

相続事業承継対策に関する以下のQ&Aにお答えしています。
(1)生前贈与 (2)小規模宅地 (3)遺言活用 (4)保険活用 (5)信託活用 (6)自社株対策

(5)信託活用の質問を表示しています。

  • 【Q1】信託とはどのような仕組になっているのでしょうか。

    【A】信託とは、お金や株式、不動産などの財産を、他人に管理または処分をさせたりする行為のことをいいます。

    信託を依頼する人のことを「委託者」、委託者から依頼を受けて財産の管理・処分をする人を「受託者」といいます。

    この委託者と受託者との間で信託契約がなされます。そして、受託者が管理等をする財産を受託者との信託行為にもとづいて利益の得られる人のことを「受益者」といいます。委託者は、ある一定の目的のために受託者に依頼するわけですが、受託者は委託者との信託契約に基づいて、財産を管理・処分することになります。

    たとえば、親が子供やお孫さんに知られずに財産を贈与したい場合、財産を信託財産として受託者に移し、受託者はそれを運用し、運用益などを子供さんやお孫さんに入るようにする、といったことです。こ

    れにより、子供さんやお孫さんの知らないうちに、少しずつ財産の贈与がなされるようになります。これはほんの一例にすぎませんが、信託を上手に活用することで、相続問題をスムーズにすることも可能です。信託には、こうした信託契約に基づく行為のほか、遺言による信託や、公正証書等に基づく信託行為などもあります。

  • 【Q2】事業承継に信託を活用することはできるのでしょうか。

    【A】これまでは中小企業の事業承継に「信託を活用する」といった考え方自体は、あまりなじまない環境にありました。

    その理由には、信託そのものにあまり馴染みがないこと、会社法や民法などの法律との整理が十分でないためリスクを避けようとする傾向にあったこと、などが考えられます。

    このような状況を受けて、平成19年に信託法は改正され、事業承継にともなって活用しやすいスキームがつくられました。

    たとえば、相続が開始されますと、遺産のすべては遺産分割協議によって相続分配が決定するまでは凍結されます。そうなると、事業運営上に空白が生まれることになります。そこで、遺言信託として受託者との間で信託契約を結び、相続が発生した場合、後継者にスムーズに受益権が移行できるように指図することで、空白部分が生じないようにするのです。

    この方法は、後継者だけでなく、相続人のなかで後継者以外にも受益権を分配することができることから、後継者問題を回避する手段としても活用できます。また、自社株対策としても、信託を活用することで財産的部分について後継者に取得させることもできます。事業承継に信託を活用するという選択肢もあることをぜひ覚えておいてください。

  • 【Q3】遺言信託は効果的に活用できることを訊きました。具体的にどのようなことでしょうか。

    【A】遺言信託とは、委託者による遺言によって信託財産を受託者が管理・処分等をする行為のことをいいます。

    基本的に信託と同じ契約になりますので、仕組も信託と同様です。

    遺言信託のメリットは、遺言者の目的に応じて信託の運用・管理・処分がしやすくなるという点があげられます。通常の遺言による遺贈や、相続によるものと変わらないように思えますが、遺言の場合は、財産配分などが書かれていたとしても、相続人が遺留分を押し出せば、遺言者のとおりになることは難しくなります。とくに事業承継において、長男に事業に関する全財産を移行したいと思っても、他の家族から遺留分を申し立てられれば、遺言者の意向に沿わないばかりか、最悪の場合は会社の存続問題にも発展しかねません。

    このような事態を招かないために、遺言信託では、遺言者の意向を反映し、財産の移転などについて受託者に依頼し、受託者は委託者の意向にそって財産の管理・運営をします。もうひとつメリットとしては、遺言は一代限りの財産移転についてしか指定できませんが、遺言信託であれば、子の世代だけにとどまらず、孫の世代まで決定することができます。この場合「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」という信託契約をすることで、可能になります。現経営者が将来にわたって言及することができる制度として、この遺言信託は十分に活用できると思います。

  • 【Q4】信託の受託者は、どのような人でも可能なのでしょうか。

    【A】信託をする際には、信託財産を管理・運営・処分等をする受託者を選定する必要があります。

    受託者の要件は、特に規定がありませんので、個人でも、法人(信託銀行など)でも受託者とすることができます。なかには、委託者の親族などを受託者にすることもできます。

    とはいえ、大切な財産を託され、委託者との信託契約に基づいて信託財産を運用・処分することを目的としていますので、責任は極めて重大といえます。

    そこで信託法では、受託者の義務として、(1)善管注意義務、(2)忠実義務、(3)分別管理義務、といった3つの要件を義務付けています。

    たとえば、善管注意義務では、善良な管理者として注意をもって信託事務を処理することとしています。また、忠実義務では、受益者のために忠実に信託事務を処理することを義務付けています。このほか、公平義務や帳簿等の作成等といった報告・保存の義務など、受託者としての義務を明記しています。

  • 【Q5】投資信託という言葉を訊きますが、どのようなことでしょうか。

    【A】投資信託とは、信託会社等が顧客から不動産や株券などの資産を預かり、その資産に対して投資をよびかけます。そこで得られた利益を投資家に対して分配するという方法です。

    たとえば、不動産を保有する人がいて、その不動産をさらに運用しようとするとき、運用の仕方によっては利益を得られることになります。そこで、不動産を活用するために、その土地に消費者に人気のある複合商業施設などを建設しようと考えたとき、その建物を建てる建築費等がかかってきます。

    信託を受けた信託会社等は、その不動産の上に建てる建物について告知し、第三者から資金を用立てるわけです。そこで得られた資金を元手に商業施設等を建造し、そこから得られた利益を投資した人たちに投資額に応じて分配するという方法です。投資信託はいわば投資ですから、必ずしも元本が保証されるわけではありませんが、投資先によっては思わぬ利益を得られることから、根強い人気があります。