【6】企業経営 | (1)海外進出
企業経営に関する以下のQ&Aにお答えしています。
(1)海外進出 (2)決算対策 (3)リスクマネジメント (4)事業承継 (5)M&A (6)税務調査
(1)海外進出の質問を表示しています。
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【Q1】中小企業が海外進出する目的と、進出する国にはどのような先があるのか、教えてください。
【A】中小企業に限ったことではありませんが、企業が海外進出する目的には、販路拡大や人件費の削減、新市場への進出、為替差益の確保、生産力の向上など、さまざまなメリットを期待できることがあります。人件費の面でいえば、中国やベトナム、インドネシアなどアジア諸国に生産拠点を構える企業も多く、その多くは日本で生産するよりも人件費の負担が軽減できることがあげられます。中小企業基盤整備機構の「平成23年度中小企業海外事業活動実態調査」においても、海外に進出する企業の86%超が中国や台湾、タイ、ベトナムやシンガポールなどのアジア圏に拠点を置いています。日本で生産し、販売するよりも、マーケットとして魅力的といわれている海外、とくにアジア圏に進出する企業が多いのも、人件費だけの問題ではなく、市場として有望視されているという一面もあります。中小企業にとっても、市場開拓は喫緊の課題です。海外に活路を求める企業が多いのは、日本国内だけでは厳しい実情があるためとも考えられます。最近では、中国やベトナムなども人件費が高くなってきており、以前のような経費負担の軽減というメリットを受けづらくなってきるようです。
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【Q2】中小企業が海外進出して成功をおさめるためにはどうすればいいのでしょうか。
【A】中小企業にとって、海外進出というのは一大決心が必要になります。もし進出しても十分な成果を得られなければ、企業にとっては大きな損失につながります。大企業のように、海外事業でうまくいかなければ撤退すればいいのというわけにはいかず、中小企業の場合は存続問題に発展するほど深刻化します。実際に海外進出して成功を収める方法は、簡単にあるわけではありません。そもそも海外進出するだけのメリットがあるのかどうか、進出する前にしっかりと検討する必要があるでしょう。よく、経費削減につながるということで海外進出する企業は多いようですが、従業員の人件費を削減するまえに、従業員を管理するのは誰なのか、組織としてしっかりとした体制ができているのか、規模は拡大できても品質の面で基準をクリアできるのかなど、コスト以外の部分にも配慮しなければならないといえます。ある食品メーカーでは、現地の人を採用し、その食品が現地の人たちに知られるようになり、市場ニーズに適応したという例もあります。朱に交われば赤ではないですが、現地の人に受け入れられるようにすることが、成功への第一歩かもしれません。
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【Q3】海外進出において、どのようなリスクが考えられますか。
【A】海外進出を目指す企業は依然として多いですが、目的はそれぞれだと思います。質問者のように、販路拡大であったり、人件費削減や競争力強化など、企業メリットを考えてのことでしょう。まずやるべきことは、進出する先の国の実情を知ることです。進出予定の国の国民性や政治、宗教、人種、市場ニーズなど、多角的に分析することが必要です。なかには、政情不安な国もあると思いますが、政権交代によってクーデターや内紛が起きそうな国ですと、高いリスクを負うことになってしまいます。これにともない、経済的なリスクも当然に負うことになりますので、国の状況を把握することはとても大事です。その他、当該国へ進出している企業などの動向、売上状況、業種動向など、できるだけ情報を収集することも求められます。とくに同業他社で先行して進出しているような場合、マーケット情報なども得ていると思いますので、貴重な情報源になるはずです。海外の場合、このようなリスクがあることを想定しておかなければなりません。そこで、判断基準として国債などの格付けを把握し、いわゆるカントリーリスクがどれほどなのかを事前に認識しておくことが肝要といえます。
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【Q4】日本のTPP参加を受けて、当社も輸出先などを拡大したいと思っています。どのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。
【A】TPP(Trans-Pacific Partnership)とは、環太平洋パートナーシップと訳されますが、太平洋地域の経済自由化を目的とした協定をすることを目的としています。2014年4月現在、TPPに参加を表明している国は、アメリカやオーストラリア、シンガポールなど9か国に加え、日本やカナダ、マレーシアなども参加を表明しました。国同士による交渉は今も続いていますが、基本的には関税の撤廃(減税)や輸出入品目の拡大などが取り上げられています。業種の違いはありますが、輸出入メリットとしては自由貿易が原則になりますので、しやすくなることがあげられます。これまでは現地法人の設立が義務付けられていたり、関税が高かったりしたことにより、輸出入がむずかしい品目もありましたが、これがよりしやすくなることが考えられます。反対に、関税が高かった輸入品目については、品目数が大幅に増えることから、国内市場においての競争が激化することが予想されます。TPPの動向を見つつ、どのような品目で海外に向けて発信するかが求められているところです。
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【Q5】海外進出する中小企業の現状について教えてください。
【A】日本企業が海外に進出するうえで、もっとも必要とされる資質に、判断力、交渉力、スピード力、プレゼン力などがあげられます。ビジネスは時間との闘いです。交渉するにしても、こちらも時間を割いていますが、相手はこちらの事情で時間を割いてくれています。そのため、何よりもスピードが求められるところでしょう。日本人は慎重に検討する国民性があることから、その場で即断即決できないと思われがちです。慎重に検討するのはある程度許容されるところですが、慎重すぎるのは判断力がないと思われてしまう可能性があります。特にトップ同士の交渉ならば即断も可能でしょうが、担当者レベルでは即断は難しいところです。しかし、交渉の最中に本社に伺っていては時間がかかってしまいます。そのへんの権限をどこまで担当者に委譲できるかが、求められるところはあります。また、海外ではプレゼンテーション能力も求められるところです。なぜ進出国でビジネスをしたいのか、どのような点が自社のオリジナル性があるのか、明確に発言内容を伝える提案力などがプレゼンの優劣を決めるといわれています。