【6】企業経営 | (5)M&A
企業経営に関する以下のQ&Aにお答えしています。
(1)海外進出 (2)決算対策 (3)リスクマネジメント (4)事業承継 (5)M&A (6)税務調査
(5)M&Aの質問を表示しています。
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【Q1】M&Aとは、どのようなことでしょうか。
【A】M&Aとは、企業同士の合併(Mergers)と、企業の吸収(Acquisitions)のことを略して表したものです。通常は企業の吸収・合併を総称してM&Aといいます。企業合併とは、2つ以上の会社がひとつになることをさし、企業吸収はある会社が他の会社を買い取ったりすることをいいます。企業を吸収・合併するにはいくつかの方法があって、一般的には相手の株式の譲受や新株の引き受けなどのほか、事業譲渡などがあげられます。中小企業のM&Aは、おもに株式の譲渡によってなされることが多いといわれます。株式の買い取り方法には、株式公開買い付けという方法と、相対方法とに分けられます。通常は買い取る側の企業が、売る側の企業の株式を当事者同士が相対によって買い取る方法が考えられます。しかし、M&Aでは株式の取扱いが多いことから、株式公開買い付けが用いられています。TOB(Take Over Bid)ともよばれていて、株式市場外で不特定多数の株主から株式を買い取ることを、株式公開買い付けといいます。この方法では事前にTOBの目的、価格、購入予定株数などを公表することが義務付けられています。ときに、買収をしたい企業の賛同をえることなくTOBを行うこともあります。これを敵対的TOBといいます。
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【Q2】M&Aによる企業のメリット・デメリットはなんでしょうか。
【A】企業合併(M&A)のメリットは、今以上のマーケット規模の拡大をはかれること、同業他社との差別化ができること、事業主体の拡大化がはかれること、新規シェアの拡大ができることなど、スケールメリットと同時に企業自体のさまざまなメリットがえられることが考えられます。たとえば、ある商品開発力の強い企業が新規マーケットに進出をしたいがそのノウハウがわからないとします。たまたまそのマーケットでシェアがある企業がいるけれども、新規の商品開発が遅れているとします。今後、このマーケットを盤石にするために、双方がメリットのあることがわかれば、合併という選択肢で対応することはメリットにつながると考えます。一方、デメリットについては、通常のM&A自体がメリットを得ることを目的にしているものなので、あまり考えられません。ただし、友好的なM&Aではなく、敵対的なM&Aならば、話は別です。敵対的M&Aは、一方的に会社を吸収・合併することを目的としていますので、自社にとってメリットがあるとはいえません。同じM&Aでも、双方合意のもとに行われる場合もあれば、そうでない場合もありますので、どのような状況においてM&Aがなされるのか、見極める必要があるといえます。
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【Q3】M&Aというと大企業などをイメージするのですが、中小企業でもよくあるのでしょうか。
【A】新聞やテレビなどのマスコミで「××企業と〇〇会社が対等合併」などと報じられたのを見かけたことがある人は多いと思います。有名な会社や一部上場企業同士の合併、あるいは外国企業を買収した日本企業という情報が、マスコミを通じて報道されることは多いと思います。このような報道がなされると、M&Aは大企業で行われているものだ、そう思う人も多いかもしれません。しかし、実際にM&Aを現実的に実施しているのは、むしろ中小企業に多いのです。日本における中小・零細企業の比率は、全企業の95%を超えています。つまり、日本企業のほとんどは中小・零細企業といっても過言ではありません。さらに、中小企業では後継者不足という深刻な事態が起きるケースも頻発しています。創業社長が苦心の末作り上げた事業ノウハウやビジネスモデルも、それを承継する人がいなければすべて水泡に帰します。さらにいえば、経営者に万が一のことがあれば、経営者のご家族はもちろんこと、従業員や取引先に至るまで火の粉がふりかかってきます。最悪の場合、会社倒産もしくは会社清算となるのです。こうした事態を未然に防ぐ方法として、中小企業では事業承継にかかるM&Aを実施するケースが多いのです。
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【Q4】中小企業の経営者です。後継者がいないので、事業承継を考えるうえで、M&Aも視野に入れて検討しようと思います。どのような点に注意すべきでしょうか。
【A】中小企業における後継者問題は深刻です。親族のなかで後継者がいれば将来に期待がもてますが、いないとなると話は別です。従業員の中から期待できる人をさがすにしても、後継者として育成する期間も考えると、一朝一夕ではできない問題ですし、株式等の資産移行も他人となるとハードルが高くなります。とはいえ、このまま事業を収束してしまっては、これまでの努力が報われなくなってしまいますから、せめて事業を継続することを第一に考えるべきでしょう。そうすると考えられるのは、M&Aによる事業承継が適当といえるかもしれません。さて、M&Aによる事業承継ですが、まずどのようなかたちで事業承継をするかです。会社ごと買ってもらう方法もあるでしょうし、経営者を招聘するという方法もあるでしょう。ただし、ここで大きな問題があります。それはどのようにしてM&Aの相手先をさがすかです。自社の事業内容や従業員、経営陣、取引先など、経営者が懸念される要因をすべて受け入れ、買収を引き受けてくれる企業があるかどうかでしょう。もちろん、簡単に買収元を探すことはできません。まずは顧問税理士や顧問弁護士などに相談することでしょう。もっとも自社をよく知っているのは顧問税理士や弁護士でしょうから、そこを通じて仲介してもらう方法があるでしょう。また、商工会議所やメインバンクに相談するという方法もあります。民間でM&Aの仲介をする業者もいるようですから、そのような先にも声をかけるとよいかもしれません。買い手が見つからなければ、M&Aすらできませんから、相手先を見つけることが肝要です。
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【Q5】M&Aにとても関心があります。しかし、相手先との相性などもあるので、助走期間をつくりたいと思っています。どのような方法がありますか。
【A】M&A=企業の吸収・合併ではありますが、広義ですと、株式の持ち合い、合併企業の設立といった分野まで広がります。M&Aは、企業提携のなかの資本移動を伴う提携に含まれます。資本移動を伴うなかに、狭義のM&Aが含まれますので、具体的な合併・吸収という流れになると思います。ご質問では、助走期間をつくりたいというお話ですが、将来的にM&Aを期待しているのであれば、まずは資本移動が伴わない業務提携などから始めてはどうでしょうか。たとえば、営業部門だけの業務提携をしてみるとか、研究開発のための技術提携をするといった資本の移動がない提携からスタートするのです。そうしますと、双方の企業の風土や人材交流などがはかれることになります。そのうえで、より密接な関係を築くのであれば、お互いの株式を持ち合うことで業務提携の強化をはかっていきます。最近では、双方から資金を出し合って株式持株会社をつくり、現在の本社機能はそのままに、持株会社の傘下のもとでグループ企業化する企業も多くみられます。この助走期間がどれだけ必要なのかはわかりませんが、会社同士の風土や経営理念など、双方で合意する必要もあることから、こうした助走期間はあってもいいかもしれません。