【6】企業経営 | (4)事業承継
企業経営に関する以下のQ&Aにお答えしています。
(1)海外進出 (2)決算対策 (3)リスクマネジメント (4)事業承継 (5)M&A (6)税務調査
(4)事業承継の質問を表示しています。
-
【Q1】事業承継を考えています。まず何から始めればいいでしょうか。
【A】どんなに元気な経営者でも、いずれは次の世代に会社を継承する必要が出てきます。この会社経営を次の後継者にバトンタッチすることを、「事業承継」といいます。事業承継と一言でいっても、一朝一夕でできるというものではありません。現経営者の会社に対する思いや、従業員を思いやる気持ち、さらに将来的な事業運営などについて、後継者が十分に意を汲んで継承できるかどうか、といったことを勘案し、次期経営者に対してそれらも含めた会社の資産をすべて託すことになります。とくに中小企業における事業承継は会社の将来を大きく左右するだけに、その責任は極めて重くなるといえます。加えて、後継者もすぐに経営をバトンタッチしたからといって現経営者と同じような手腕を発揮できるようになるまでは、しばらく時間がかかります。そこで、事業承継をついて考えるようになったら、次期後継者に助走期間を与える意味でも、なるべく早めに後継者に事業だけでなく、経営ノウハウを伝えながら、次期経営者となるための後継者育成が必要といえます。ですから、事業承継を考えたら、次は次期経営者の育成をすることが求められます。
-
【Q2】円滑に事業承継するために、どのような点に留意すればいいでしょうか。
【A】事業承継とは経営の委譲だけにとどまらず、会社のさまざまな資産、人材など、すべてにわたる継承をすることになります。そのための事業承継計画を立案し、その計画にそってひとつひとつステップを踏んでいくことが求められます。事業承継計画では、会社の状態(株式の保有状況、財産分配など)を把握し、状態にあった承継を行います。次に、社内における後継者の認知です。ここでは親が経営者で、息子を後継者にした場合を例にとります。親としては、息子を後継者として社内で認知してもらう必要があります。そこで、親が経営者であるうちに息子を会社に入社させ、実務などをさせながら会社の実態を肌で学ばせる方法があります。後継者育成の間に、経営者は自社株をどうするか、資産等の分配、遺言の作成など、後継者に承継するための段取りをとっていきます。このように後継者育成と並行して、会社関係の資産を後継者に委譲するための事業承継に関する策定をして、そのプランで動くことが求められます。
-
【Q3】平成25年度の税制改正で、事業承継に関する改正が行われたとききました。具体的にどのようなことでしょうか。
【A】平成25年度の税制改正では、非上場株式の中小企業の後継者が、現経営者から会社の株式を受け継ぐ場合に、相続税では80%分、贈与税では100%分が軽減される制度になりました。これにより、事業承継がずっとしやすくなることになります。今回の改正ポイントをみると、事前確認が必要なくなり手続きが簡素化されたこと、後継者は親族に限定していたが今般の改正で親族外承継も対象になったこと、雇用8割維持要件の「5年間毎年」が「5年間平均」に緩和されたこと、など6項目があげられます。手続きの簡素化(平成25年4月から適用)を除き、平成27年1月1日から適用されることになりますが、事業承継がずっとしやすくなったといえます。
-
【Q4】後継者を育成してこなかったのですが、こういった場合はどうすればいいのでしょうか。
【A】オーナー経営者の企業ですと、経営者がずっと第一線に立って会社を引っ張ってきたと思いますので、常に前進をしていたことと推察します。しかし、ある程度の年齢に達してくると、気づけば後継者を育成してこなかったという経営者もいることは事実です。事業に突っ走りすぎてしまい、肝心の人材育成が手つかずになってしまって、後継者について対策をとってこなかったというわけです。後継者を育成するためには、一朝一夕ではできるものではありません。このように後継者が不在という場合、会社を存続させることを優先するならば、外部から後継者を受け入れることが必要になってきます。たとえば、他社で経営をしていた経営のプロを招聘するとか、同業他社などに企業合併(M&A)を働きかけるといった方法が考えられます。外部の協力なしに企業存続をするのは困難な状況ならば、こうした方法をとることが求められます。また経営陣が金融機関などから資金の支援(融資)を受けて会社の株式の全部もしくは一部を買収することで会社を存続させる「MBO(Management Buy-out)」という方法もあります。どちらにしても、顧問税理士などに相談をし、引き継いでもらえそうな会社や経営者を紹介してもらうという方法もあるでしょう。
-
【Q5】事業承継にあたって、争族になりはしないかと懸念しています。回避する方法はあるでしょうか。
【A】事業承継がスムーズに行われるためには、争いごとがなく、後継者が円満なかたちで承継することがもっとも理想です。しかし、経営者の思うように運ばないことも考えられるでしょう。現経営者が実子を後継者にしたいと思っても、役員のなかに現経営者の兄弟姉妹がいるとか、血縁以外の親族がいるなどの場合、簡単に事業承継できないおそれもあります。現経営者がいくら実子の後継を望んでいたとしても、親族間で争いごとが起きてしまったら、収拾するのは容易ではありません。場合によっては裁判所で争われることになってしまいます。このような不測の事態に陥らないためには、事前に実子を後継者にすることを親族で認知させることが肝要になってきます。仮に現経営者が無理やりに実子を後継者に指名したとしても、親族から反発等があれば会社の存続が危うくなります。会社として現経営者の実子を後継者として認めさせないことには次に続きませんから、ここは現経営者の手腕が発揮されるところかもしれません。