【1】相続贈与 | (1)遺産整理手続き

相続贈与に関する以下のQ&Aにお答えしています。
(1)遺産整理手続き (2)税額目安 (3)財産評価 (4)遺産分割 (5)税務申告 (6)税務調査

(1)遺産整理手続きの質問を表示しています。

  • 【Q1】 夫が亡くなりました。主人名義の自宅や預貯金など、資産の取り扱いについてどのようにすればよいのでしょうか。

    【A】本ケースのように、亡くなった方がご主人(被相続人)の場合、自宅や預貯金など、ご主人名義の財産があることが考えられます。

    このような被相続人に財産がある場合、一定の基礎控除額を超える分については、被相続人の財産を取得した人(相続人等)に相続税が課せられることになります。

    そこで、相続税がかかるかどうかを調べるために、被相続人の財産についての整理が必要です。これを「遺産整理業務」といいます。遺産整理業務では、被相続人が遺した財産について色々調べることになります。具体的にどのようなものが課税される相続財産になるのかといいますと、被相続人(本ケースではご主人)名義の土地や建物、有価証券、預貯金通帳、ゴルフ会員権、自動車、貴金属、保険金などがあげられます。こうした相続財産のほかに、借入金などの債務についても調べます。

    相続税は、亡くなったご主人にではなく、残されたご家族(相続人)の方々に課せられるものですから、誰に、どれぐらいの相続税がかかってくるのかを知る必要があります。遺産の整理は、被相続人のためではなく、残された相続人の方々にとってとても大事な作業といえます。

  • 【Q2】一言で遺産といわれてもピンときません。具体的にどのようなものを指すのでしょうか。

    【A】遺産(相続財産)には、(1)本来の相続財産、(2)相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産、(3)みなし相続財産、(4)相続開始前3年以内の贈与財産、などに大別されます。

    このなかで特に多いのは、(1)の本来の相続財産と、(3)のみなし相続財産です。本来の相続財産には、不動産(土地、借地権、家屋など)、現金等(現金や預貯金、有価証券など)、家庭用動産(自家用車、絵画、貴金属など)、家族名義の預貯金(被相続人が実質的な所有者と考えられる預貯金や有価証券)などが該当します。

    (3)のみなし相続財産とは、実質的に相続や遺贈によって取得した財産と同様の財産のことを指します。

    たとえば、被相続人が保険料を負担していた死亡保険金等や、被相続人にかかる死亡退職手当金や功労金、郵便年金契約や退職年金契約などの年金受給権などがこれに該当します。なお、生命保険金等については一定額が控除されるほか、墓地・祭具等については、相続税がかからない非課税財産となります。また、葬式費用は相続財産から控除できます。

  • 【Q3】なぜ遺産を整理する必要があるのでしょうか。

    【A】被相続人の遺産を整理する理由としては、被相続人の財産を相続した相続人にどれだけの相続税が課税されるのかどうかなどを調べ、国に対して相続税に関する申告をしなければならないからです。

    とはいえ、不動産関係でいうと土地や家屋等の権利証の有無、預貯金通帳や証書の確認、有価証券等の現物や預り証の確認のほか、生命保険等の証書や、年金関係の書類確認など、そろえる書類だけでも相当な量にのぼります。

    このほか、遺品を整理していたら相続人名義の通帳が出てきたとか、見覚えのない不動産関係の書類が見つかったなど、被相続人自身でなければわからないような財産もあります。しかも、相続税の対象財産には、それぞれ評価基準が設けられていて、諸条件にそって基準額を算定する必要があるほか、条件によって控除対象になる財産等もあるなど、相続財産によって算出方法が違います。

    最近では、遺産整理について銀行など各金融機関でも代行しているようですが、被相続人の資産状況を把握するだけでなく、相続税の対象になるのかどうかを判断するための高度な知識と経験を有した、税理士などの専門家に依頼するのもよいでしょう。

  • 【Q4】遺産整理の手続きは、いつまでにすればよいのでしょうか。

    【A】遺産整理の手続きについては、以下のようなタイムスケジュールが目安となります。まず、被相続人が死亡してから7日以内に死亡届を提出します。葬儀を執り行ってからは、死亡者の遺言書の有無についての確認、そして、戸籍謄本から遺産を相続する相続人の確認をします。この間に、被相続人の遺産を整理し、遺産がどれほどあるのか、遺産金額などの概要について把握します。

    ここまでに要する期間は3か月以内になります。そして、この3か月以内で相続を放棄するかしないかなどを決めます。整理した財産について種類別にチェックし、財産ごとの評価をします。

    また、この財産評価とは別に、亡くなった日までの所得税の準確定申告の書類を4か月以内に提出します。準確定申告の提出をしたのちは、相続人における遺産分割協議を行います。遺産分割協議とは、相続人同士で遺産をどのように分割するかを話し合う場です。全相続人の合意が得られない場合は家庭裁判所に調停の申し立てをすることになりますが、合意が得られれば遺産分割協議書を作成し、協議書に従って遺産分割します。これをもとにして、各相続人の相続税の計算をし、最終的に相続税の申告・納付となります。死亡届を提出してから相続税の申告・納付をするまでの期間は、10か月以内となっています。

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  • 【Q5】先日、父が亡くなり、家族で相続財産を整理しているところです。少々、資金を用立てようと父名義の通帳から現金を引き出したいのですが、可能でしょうか。

    【A】被相続人の遺産整理中で、被相続人名義の預貯金通帳から資金を引き出せるのかどうかという質問ですが、金融機関では、相続人から被相続人の死亡届が提出された時点で口座取引を停止します。

    また、被相続人名義の貸金庫や当座借越などの金融サービスもすべて停止することになります。ですから、それ以降金融機関へ行って、被相続人名義の預貯金通帳を持参して預貯金を引き出そうとしてもできません。遺産分割協議の上、各相続人に相続される金額が決定するまでは、相続財産は相続人全員の共有となるからです。

    本ケースでは、質問に「家族で相続財産を整理している」とあることから、おそらく複数の相続人がいるものと推察されます。被相続人名義の口座を解約もしくは名義変更などをする場合には、遺産分割協議後に相続財産の分割が確定してから、相続人全員の同意書など、必要書類を提出することによって、当該口座からの引き出し等が可能になります。

    なお、提出書類については、各金融機関によって違いがありますので、手続きをする際には事前に確認するとよいでしょう。