【1】相続贈与 | (6)税務調査

相続贈与に関する以下のQ&Aにお答えしています。
(1)遺産整理手続き (2)税額目安 (3)財産評価 (4)遺産分割 (5)税務申告 (6)税務調査

(6)税務調査の質問を表示しています。

  • 【Q1】税務調査とはどのようなことをするのでしょうか。

    【A】税務調査とは、申告された内容が正しいかどうかを判断するために、税務署が申告内容の漏れなどを調査することをいいます。

    税務調査というと、世間一般にしられているのは、以前に映画にもなった「マル査」とよばれる人たちの調査だと思います。マル査とは財務省の外局である国税庁の国税局査察部に所属する国税専門官等が、悪質な脱税等の案件に対して強制調査をすることをさします。

    相続等に関する税務調査も、じつは法人・個人に関係なく、行われる場合があります。マル査では、いわゆる年度ごとの税金に対して悪質な案件を調査するものですが、相続関係の場合はそれとは異なります。

    そもそも相続関係の案件は、毎年必ずあるというものではなく、相続が発生した時点で初めて対応するものです。つまり、相続時の1回ですべての財産を見つけ、遺産総額を出し、遺産分割を行い、相続税の申告・納税に移るわけです。

    こうした理由から、税務署では、相続案件が発生した場合は、漏れがないように、できうる限りの範囲で税務調査を実施することにしているのです。

  • 【Q2】税務調査はどのような方法で実施されるのでしょうか。

    【A】税務調査は大きく分けて、「強制調査」と「任意調査」があります。通常の税務調査は任意調査をさしますので、ここでは任意調査について説明します。

    任意調査には、「実地(臨宅)調査」と「反面調査」という2つの方法があります。まず実地(臨宅)調査ですが、相続人から亡くなった人(被相続人)の生活や財産の状況について聞き取り、申告内容に誤りがないかどうか確認する聴取調査と、被相続人の自宅に直接赴き、金庫やタンス、書類関係のある場所などを確認する現況調査があります。

    それと、もうひとつ、不動産関係については、相続税の申告書に記載された場所に実際に行って確認する現地調査の、以上3つがあります。

    一方、反面調査ですが、これは相続人や被相続人以外の第三者に対して実施される調査です。調査先はおもに、銀行などの金融機関や、被相続人とかかわりのあった取引先などになります。ただし、反面調査は第三者に行われることから、客観的にみてやむを得ないと判断された場合や、社会通念上相当と認められる場合など、実施にあたっては要件が定められています。

  • 【Q3】税務調査はいつ、どのような段階で行われるのでしょうか。

    【A】税務調査は、相続税の申告・納付が終わってから、申告の内容を確認し、内容に誤り等があった場合に実施されます。

    相続税の申告・納付は相続が発生してから10か月以内に手続きをとることになっていますので、税務調査はそれ以降となります。ですから、調査が入るまでの期間は1~2年ほどになる場合もあります。

    税務調査では、申告内容の確認等はもちろんですが、ほかにもさまざまな情報をもとに調査をします。たとえば、亡くなった人がいますと、市区町村役場に死亡届が提出されますが、同時に税務署にもその通知がいきます。これは相続税法第58条の規定により、死亡届を受理した市区町村役場は届け出がなされた翌月末までに、その記載された事項を、管轄する税務署に通知することになっているからです。

    また、亡くなった人の所有する不動産関係の固定資産税評価証明書等も送付することになっています。このように、相続が発生すると、その情報は管轄税務署に通知されることになりますので、ある程度の相続にかかる財産の状況を把握することができるようになっているのです。

    そのほか、これまで確定申告などで納税状況が蓄積されていますので、こうした税務関係のさまざまな資料や情報をベースに、税務調査はなされることになります。

  • 【Q4】税務調査ではどのようなことを訊かれるのでしょうか。また、訊かれることについて注意することはありますでしょうか。

    【A】税務調査といっても、初めてのことで、最初はどうしていいかわからない人も多いと思います。そのへんは調査官も心得ていて、気持ちをほぐすような世間話などをすることもあるでしょう。ここで、ついリラックスしすぎてしまって、あやふやな解答をしてしまったり、知らないのに知ったかぶりをしてしまったりするかもしれません。

    まず、調査官に訊かれたことについては、正確に、知っていることだけを話すようにします。

    たとえば、「ここにある300万円の出金がありますが、何につかったのですか」とか、「土地はどこから手に入れたのでしょうか」といったように、亡くなった人でなければわからないようなことも訊かれます。

    そのとき「たぶん~ではないでしょうか」とか「おそらく~から購入したものだと思います」などという、あいまいな返答は避けましょう。わからなければ「わかりません」「知りません」と返答するようにします。このような調査を聴取調査といいます。

    また、現況調査のように、金庫や貸金庫、重要な書類を管理している場所についても色々訊かれます。申告しているもの以外で、何か資産がないのか、家族名義ではあるものの、実情は被相続人名義の資産ではないのかなど、調査は細部にわたって行われます。とくに書類等が保管している場所については、寝室など他人に見せたくない場所もあるでしょう。このような場合は、無理に応じず、「ここには他の書類は保管していません。あれば後で連絡します」と無関係であることを主張します。

  • 【Q5】税務調査を受けるにあたって、事前に用意すべきものはありますか。

    【A】相続の申告まで10か月間以内で行い、やっと終わって忘れかけていたころに、税務調査の連絡が入ることになります。

    といっても、いきなり税務調査官が抜き打ちのようなかたちでくることはありません。最初は慌ててしまいそうになりますが、ここは冷静に対処することが必要です。

    もし連絡がきたら、調査官の所属先、調査官の名前、税務調査の日程などについて確認します。連絡は、相続人の代表者と、相続税を扱った税理士にも連絡がいきます。

    さて、調査官がくるまでに準備するものとして、申告に関係のある書類をまとめておきます。書類は分散していると、いちいち場所を移動する必要があって面倒なので、できれば一室にまとめておくとよいでしょう。準備する書類は色々あります。

    主なものをあげてみると、預貯金通帳や印鑑、生命保険契約書関係書類、証券会社関係書類、土地・建物登記済権利証、固定資産台帳、賃貸借契約書、所得税等の申告書、遺産分割協議書、遺言書など、多岐にわたります。被相続人以外の家族名義に関する資産についても訊かれることがありますので、答えられるようにしておくことがのぞましいでしょう。税務調査の前に、相続税について関与した税理士と事前に打ち合わせするなどし、あいまいな点をできるだけ払しょくして臨むとよいでしょう。