【2】相続事業承継対策 | (3)遺言活用

相続事業承継対策に関する以下のQ&Aにお答えしています。
(1)生前贈与 (2)小規模宅地 (3)遺言活用 (4)保険活用 (5)信託活用 (6)自社株対策

(3)遺言活用の質問を表示しています。

  • 【Q1】遺言書を書くのは初めてです。自由に好きなことを書いてもいいのでしょうか。

    【A】最近はちょっとした遺言ブームといわれています。遺言書の書き方などの本も、書店に並んでいますので、遺言とはどのようなものなのか、おおよそ理解できるはずです。さて、自分の残した財産を家族などにどう分配してほしいのか、遺族の誰に何をのこしたいのか、自分の遺志を遺族に伝えたいという気持ちのあらわれ、それが遺言といえます。確かに、元気なうちに自分の財産をどのように家族などに残せばいいのか、それをもっとも気にするのはほかならぬ遺書を書く本人でしょう。その遺言ですが、特に書式など気にせずに自由に書くことができる遺言もあります。たとえば「自筆証書遺言」ならば、割合自由度が高い遺言書といえます。ただし、遺言に効力をもたせるのであれば、相応の書式を気にしなくてはなりません。たとえば、誤って書いてしまった場合、修正液等で消したり、適当にペンなどで文字を消したりしては、無効になってしまいます。間違いは二重線を引き、自分の印を押すことが必要です。遺書は何度でも書き換えができます。書き直せば、前に書いた遺言は効力を失います。ですから、いつ書いたものなのか、誰が書いたものか(遺言者自身が書いたものなのか)、わかるようにしておかなければなりません。

  • 【Q2】遺言書にはどのような書式や形態があるのでしょうか。

    【A】遺言書を作成する際には、法律で決められた方式で書かなければならないことになっています。遺言の種類は、普通方式遺言と、特別方式遺言の2種類に大別できます。一般的に使われているのは、普通方式遺言のほうでしょう。普通方式遺言には、1自筆証書遺言、2公正証書遺言、3秘密証書遺言、の3種類があります。このなかで特に多く使われているのが、自筆証書遺言と、公正証書遺言です。自筆証書遺言とは、遺言書を実際に書く人(自筆者)が作成し、作成年月日や署名捺印をします。自筆証書遺言のメリットは、簡単であることや内容が秘密にできる、作成費用はかからないなどがあります。しかし、紛失や改ざんのおそれがあったり、内容不備によって紛争の火種になるなどの欠点もあります。公正証書遺言は遺言者と証人2人で公証人役場に行き、証人立ち合いのもと、公証人に遺言の内容を口述し、公証人が筆記します。作成後、遺言者、証人、公証人それぞれが署名捺印します。利点は紛失や改ざん等のおそれがなく、無効になる恐れもないことです。一方で、費用がかかる、手続きが煩雑、内容を秘密にできないなどがあります。どの方式を選ぶかは、遺言をする人がどこまで遺言書に重きを置くかどうかといえます。

  • 【Q3】現在60代の中小企業経営者です。まだまだ元気なので、遺言書を書く必要はないと思っていますが、必要なものなのでしょうか。

    【A】遺言書が必要かどうかについては、人それぞれの考えがあると思いますので一概には言えません。しかし、今元気であっても、突然事故に遭遇したり、急病にかかることだって考えられます。人生一寸先は闇ですから、元気なうちに将来について考えておくことはとても大事なことではないでしょうか。質問者は企業経営者ということですが、自分がもしなにかあったら、企業存続にかかるリスクは、できるだけ事前に考えておくべきことではないでしょうか。このような意味からすれば、もしものときに備えて、ご自分の遺志というものをしっかりと書き遺しておくことも、経営者としての責務といえます。とはいえ、どのようなことでも遺言に記載できるわけではありません。それは「遺言の効力」というものがあるからです。

  • 【Q4】遺言書にはどのようなことを書いても実行されるのでしょうか。

    【A】遺言は、遺言者の遺志ですので、できるだけ尊重されるべきものです。最後に自分の遺志を遺族たちに伝えたい気持ちも強いことでしょう。たとえば、とても可愛がっていた愛犬に自分の全財産を残したいとか、家族とは直接関係のない第三者に財産を譲りたいなど、自分の遺産を自分の思い通りにしたいと考える人もいることでしょう。しかし、かといって遺言でかかれた内容があまりに現実からかけ離れていたり、遺族間に争いを起こしそうな内容であったり、相続人に不利益を与えるような内容ですと、かえって遺族間に混乱をきたし、相続を争族にする可能性があります。そこで、民法では法的拘束力のある遺言の内容について、定めています。それは、「身分に関するもの」と「財産に関するもの」です。具体的には「子どもの認知」「遺贈」「遺産分割の禁止」「遺産分割方法の指定」など10項目ほどがあります。これを「遺言の効力」とよんでいます。この「遺言の効力」に該当しない内容については、遺族たちの話し合いで解決することになります。遺言書には、複数人で書いたものは無効です。もしご夫婦で同一の遺言書を書いた遺言は認められませんので注意してください。

  • 【Q5】遺留分というのがあると聞きました。どのようなことでしょうか。

    【A】遺留分とは、遺言で書かれた内容のなかに、家族以外に財産をのこしたいなどが書かれていた場合、もし遺言どおりに書かれた内容通りに実行されたら、残された家族としては困ったことになります。「遺言の効力」に該当しなければ拘束力はありませんが、もし該当する場合などは、遺族は遺言に従うしかなくなってしまいます。そこで、このような不都合をなくすために、民法では家族の最低限の取り分について規定をしています。この取り分のことを「遺留分」といいます。遺留分については、法定相続人のうち、配偶者と直系卑属、直系尊属について認められています。この遺留分を主張できる権利のことを「遺留分減殺請求権」といいます。遺留分の割合はそれぞれの立場によって異なっています。たとえば、被相続人の配偶者、配偶者と子、配偶者と兄弟姉妹、配偶者と父母、子のみのそれぞれの場合は、財産の半分が遺留分として認められています。被相続人の父母のみですと財産の3分の1が遺留分となります。しかし、被相続人の兄弟姉妹のみの場合は遺留分は認められていません。なお、遺言者の主張を認め、遺言者がまだ生きているうちに裁判所の許可を得て遺留分を断ることもできます。これを「遺留分の放棄」といいます。