【7】医院経営 | (4)医療法人化

医院経営に関する以下のQ&Aにお答えしています。
(1)新規開業支援 (2)立地条件 (3)増患対策 (4)医療法人化 (5)労務リスク (6)医業承継

(4)医療法人化の質問を表示しています。

  • 【Q1】医療法人化とはどのようなことでしょうか。また、法人化するメリットはなんでしょうか。

    【A】個人経営による医療体制から、法人格による医療体制に移行することを、医療法人化といいます。医療法人にする目的は色々考えられますが、税制上の軽減、事業規模の拡大、医院としての信用力の向上、雇用促進、医療の高度化などがあげられます。個人経営でも十分という方もいると思いますが、所得が多くなればなるほど、個人経営ですと税額が高くなってきます。たとえば、個人経営の方ですと所得税が適用されますが、1800万円を超えた場合は税率が40%(*平成27年からは1800~4000万円までは40%、4000万円超は45%に引き上げ予定)になります。一方、法人の場合は最高税率が約35%ですから、この税率だけをみても税額の軽減につながる個人医院は多いと思います。また、万が一のことを考えて生命保険などに加入した場合、個人ですと4万円の生命保険控除額ですが、法人の場合は生命保険の種類によっては経費として全額損金算入もしくは一部損金算入することができます。最近では、高齢による事業承継を考えても、後継者がいないなどの理由で廃院するケースもありますが、法人化することで後継者問題だけでなく、老後の資金問題も策を講じれるメリットがあります。

  • 【Q2】医療法人、社会医療法人、医療法人社団など、医療法人といっても名称は色々あります。違いはなんですか。

    【A】医療法人の位置づけは難しく、公益法人でもなく、株式会社のような会社とも区別されるという特殊な位置づけになっています。公益性はあるものの公益性を積極的に追及する性格でもなく、かといって営利追求を目的とするものでもない、独自の位置づけなのが医療法人です。この医療法人には、医療法人社団と医療法人財団の2種類があります。医療法人社団とは「複数の人が集まって設立される医療法人であり、設立のため、預金、不動産、備品等を拠出するもの」、医療法人財団は「個人又は法人が無償で寄附する財産に基づいて設立される医療法人」(*東京都医療法人設立の手引きより)と定義されています。医療法人数は、全国に48820法人あり、そのうち、医療法人財団は392法人、医療法人社団は48428法人となっています(平成25年厚生労働省「種類別医療法人数の年次推移」より)。医療法人には、社会医療法人という法人格もあります。社会医療法人とは、公益法人に含まれ、医療法人のような非営利的な経営というよりも、比較的幅広い事業によって得られる収益を、医療事業に充てることができるという特殊性をもっています。このように医療法人といっても、いくつかの法人形態があるというわけです。

  • 【Q3】医療法人化の手続きはどのような流れで行うのでしょうか。

    【A】医療法人の設立にあたっては、医院のある各都道府県庁で申請の手続きを行います。これは、医療法人の所管はその医院がある各都道府県知事になります。流れは、法人の定款・寄附行為(案)の作成→設立総会の開催→設立認可申請書の作成→設立認可申請書の提出(仮受付)→設立認可申請書の審査→設立認可申請書の本申請という流れになります。本申請以降は、医療審議会(正式には社会保障審議会医療分科会)への諮問があり、特に問題がなければ設立認可書が交付されます。そして、設立に関する登記申請書類を作成し、法務局に申請をすることになります。登記が完了すれば、医療法人として正式に事業運営をすることになります。登記までにかかる期間は、多少のずれはありますが、設立許認可申請書の作成をしてから半年前後といわれています。株式会社などのように医療法人の設立もいつでもできると思っている人がいるでしょうが、それは違います。じつは許認可申請の間に医療審議会への諮問とありますが、審議会が開催されるのは年に2回(例年1月と7月)しかありません。これにあわせて設立の申請をすることになりますので、医療法人化を進める場合には、医療審議会の開催がいつかを確認したうえで手続きをすすめることが必要です。

  • 【Q4】医療法人には、都道府県知事の管轄のほかに、厚生労働省の管轄もあるとききました。その違いはなんですか。

    【A】医療法人の管轄は、基本的にその医院が所在する都道府県知事の認可によって登記されます。しかし、医療法人の形態によっては、都道府県知事ではなく、厚生労働省の管轄になる場合があります。まず、登記した都道府県ではなく、別の都道府県に医療法人を作ろうとして定款を変更し、それが認可された場合です。また、医療法人を設立しようとした場合に、開設する病院や診療所等の所在が2つ以上の都道府県にまたがっている場合で、設立認可された場合です。そして、医療法人が合併し、その開設する病院や診療所等が2つ以上の都道府県にまたがっている場合で、合併の認可がされた場合などです。医療審議会(社会保障審議会医療分科会)が開催されるのは、1月と7月になります。もし7月の開催の審議に間に合わせるのであれば、遅くとも3月頃までに設立認可申請書類の作成を済ませ、提出する必要があります。

  • 【Q5】相続問題や事業承継のことを念頭におくと、医療法人化がいいといわれました。その理由はなぜでしょうか。

    【A】ひとつには、個人経営の医師の高齢化があると思います。後継者問題をかかえる個人医院は数多くあるといわれていますが、最終的には廃院することを考えていることと思います。長らく、地域に根差した医療をしてきた個人医院が廃院となると、地域で通院してきた患者さんたちにとっては非常に残念がることでしょう。もっとも残念なケースは、年齢による引退ではなく、病気や体調不良によって医療行為ができなくなり、後継者もいないことから結果的に廃院することになったという場合です。このような場合、個人経営ならば家族以外に継げるものはいませんので、他人に引き渡すということもできません。医師不足に悩む地域ならば、こうした問題は命にかかわるものですので、事態は極めて深刻です。もし医療法人化をしていれば、たとえば継承する別の法人が出てくると、たとえ越境であったとしても認可を受ければ医院の継続ができます。後継者問題についても、医療法人化していれば、別の医療法人から医師やスタッフを派遣することもできます。何より、引退を表している医師についても、老後の資金として退職金を得られることができたり、前もって法人化していれば生命保険等の保険料は損金算入できるばかりか、老後資金を生命保険から充てることもできるのです。