【7】医院経営 | (5)労務リスク
医院経営に関する以下のQ&Aにお答えしています。
(1)新規開業支援 (2)立地条件 (3)増患対策 (4)医療法人化 (5)労務リスク (6)医業承継
(5)労務リスクの質問を表示しています。
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【Q1】医院でいう労働時間というのは、いわゆる診療時間と同じことなのでしょうか。
【A】現在、日本の労働基準法によると、1日の所定労働時間は8時間、1週間で40時間を超えないように定めています。所定労働時間とは、労働時間から休憩時間を差し引いた時間のことをいいます。お尋ねの件は「労働時間=診療時間」なのかどうか、ということですが、ここで労働時間について説明します。労働時間というのは、実際に労働をした時間のことをさします。労働とは何かということですが、たとえば、診療時間の前の書類整理とか、診察前の事前準備、診察時間を超えた治療器具等の後片付けなどもすべて含めたものです。もし、診察時間が9時から夕方7時半(休憩時間は12時30分~14:30まで)として、休憩時間2時間を差し引くと、8時間が労働時間となります。しかし、実際に9時前から準備が始まっていたり、7時半以降も診療があった場合には、その分も労働時間とみなされますから、所定労働時間を超過してしまいます。そこで、労働時間を8時半~20時とし、休憩時間を調整することで所定労働時間を設定することになります。労働時間については誤解のないようにしてください。
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【Q2】現在、医師1名、看護師2名、事務員2名の計5名のクリニックを開業しています。労働時間についての特例はあるのでしょうか。
【A】ご質問のクリニックの規模からしますと、小規模保健衛生業の特例を受けられることができます。労働基準法によると、医院やクリニックは業種区分が「保健衛生業」となります。もし、保健衛生業に該当するならば、従業員数が10名未満のクリニックや医院の場合は、小規模保健衛生業の特例を受けることができます。この特例を受けると、所定労働時間が通常1週間40時間までのところ、1週間44時間まで労働時間が認められることになります。なお、1日の所定労働時間の8時間は変わりません。さらに、1か月のなかで繁忙期と閑散期が明確になっている場合は、1か月単位として規定内の労働時間であれば変則的にシフトを変えられる変形労働時間制にすると、割増分を支払わずにすむ方法もあります。特に月の中旬から月末にかけて事務処理が立て込むけれども、それ以外は比較的閑散だという場合には効果的です。この制度を導入すると、1日8時間の所定労働時間という制約がなくなり、1日9時間の所定労働時間にすることもできます。ただし、そのぶんを1日7時間にするなど、所定動労時間内であれば変則的に設定できるのが特徴です。
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【Q3】最近、近隣のクリニックで、看護師が次々とやめたという話を聞きました。当院でもこのような事態は起こりうるでしょうか。
【A】医療機関では、医師が経営の中心にいて、それ以外の看護師、事務員、技師等はスタッフという意識が強いのが実情です。最近は中小企業でも、経営者だけでなく、従業員の経営に対する意識向上を求めているところが多いといえますが、医療機関については医師が現場の最高管理責任者であり、経営や人事労務などすべての事項は医師を中心にしているということがあります。ご質問の件ですが、看護師などのスタッフが次々と辞めるという話題は、たまに新聞等で報じられます。その原因は色々考えられますが、主に労働時間の問題、給与規定の問題、労働シフトの問題など、色々な問題が考えられます。これはその近隣のクリニックだけに限った問題ではありません。こうした問題が起きないようにするために、クリニックの中心は医師であることを十分に理解し、スタッフとのコミュニケーションをとりながら、必要とあらば有給休暇、残業、休日を改善するなど、勤務しやすい労働環境を提供することが必要といえます。最初から開業医のもとで働くという看護師さんはあまり例がないでしょう。ほとんどは大病院などで研修を受けたり、看護師として第一歩を歩んでいると思います。
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【Q4】医院経営において、職員からのクレームにはどのようなものが考えられるでしょうか。
【A】労務管理はとても難しい問題です。しかし、医師一人ですべてをこなせるわけではありませんので、職員の採用は避けては通れません。そうして採用しても、不満はどうしても出てくるものです。よく聞くのは、給与や賞与に対する不平・不満、有給がなかなかとれない、拘束時間が長い、人間関係がうまくいかない、などが考えられます。とくに医療機関はトラブルが多く発生するといわれている業種といわれています。よくあるケースとしては、院長が事務長を兼任していることがあります。事務経験のない院長が事務のトップにいることで、スタッフの不平や不満を引き上げることができないというものです。またコミュニケーション不足も指摘されています。トップである院長が忙しいですから、スタッフとの時間をもつことが難しいことが原因とされています。また、医療機関は女性が非常に多い職場であるといった環境も考慮すべきでしょう。ちょっとした噂、悪口、告げ口など、些細なことでも口から口に伝播していきます。噂などはスタッフだけにとどまらず、患者さんにも広まってしまうようになると、経営にも影響が出るおそれがあります。どの業界でも、職員からの不平・不満は出るものです。少しでもコミュニケーションをとりながら、スタッフとの交流を深め、ひとつひとつ誠意をもって解決・改善にのぞむことが求められるでしょう。
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【Q5】スタッフを採用するうえで、気を付けるべきことはなんでしょうか。
【A】医院経営においてもっとも重要なのは、スタッフの質と能力でしょう。せっかく採用するのであれば、医院のために活躍してくれるスタッフを求めたいところです。まず第一段階として、書類審査で採用条件等についてどのような要望があるのかを確認します。たとえば、看護師のなかにはお子さんもいると思いますので、就業時間の問題、育児休暇の問題、有給休暇などの問題など、要望に対してどこまでこたえられるのか、賃金体系についてはどこまで歩み寄れるのか、ある程度基準を設けておくと、篩にかけることはできます。書類審査で確認できないところは、面接で判断します。といっても、忙しい合間をぬっての面接なので、あまり時間を割くことはできません。ですから、書類選考でどこまで絞れるかがとても大切になってきます。面談では、履歴書等に書かれた内容の確認をしながら、相手の人柄や性格、仕種なども見ます。色々な質問を相手にぶつけるなかに、「これまで失敗をしたことがあるのか」など、答えづらい質問をしてみるのもいいかもしれません。失敗のある人は、何かを解決する術を身に着けているはずです。そもそも失敗したことがない人などいませんから、そこで面接者の性格はわかります。完璧な人などいませんので、こちらの要望にどこまでこたえられる人材を確保できるのか、それは院長自身の力量にかかっているといえるでしょう。