【7】医院経営 | (2)立地条件
医院経営に関する以下のQ&Aにお答えしています。
(1)新規開業支援 (2)立地条件 (3)増患対策 (4)医療法人化 (5)労務リスク (6)医業承継
(2)立地条件の質問を表示しています。
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【Q1】開業にあたり立地環境などはとても重要だと思いますが、どのような点に考慮すればいいでしょうか。
【A】開業するにあたって検討すべきことは、開業予定の地域の特性を知ることです。いわゆる地域特性の把握が大事です。なぜ地域特性を知る必要があるのかといいますと、開業にあたっての商圏、つまり実際に診療を必要とする人たちがどれほどいるのか(診療圏)、どの程度まで商圏として考えていいのかどうか(たとえば医院より半径1キロ圏内とか)、といったリサーチを行うことで、医院経営を安定的に維持できるのか、良質な医療提供ができるのかを判断する情報になります。こうした地域の特性を知り、市場ニーズや利益などを考えることを、エリアマーケティングといいます。このエリアマーケティングをするうえで柱になるのが、1自然環境、2歴史背景、3人口動態、4産業構造などです。最近では過疎化が深刻化している限界地域もありますし、医師不足なども地域では出ています。このような社会環境の変化を踏まえつつ、ご自分の理想と現実を十分に検討したうえで、開業地を決めることが肝要だといえます。
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【Q2】診療圏調査で重要なポイントはなんでしょうか。
【A】診療圏は、開業する医院が実際に診療地域としてメインとなるエリアのことですから、いわば医療事業を行ううえでの核となる地域に相当します。ここで大事なことは、どれだけの人口の動きがあるのか、具体的に分析することにあります。これは医療だけに限ったことではありませんが、エリアマーケティング調査をするうえで、たとえば、商圏内の人口ピラミッド(年齢階層)や年代別構成比、産業者別就業比率、昼夜間人口比率など、人口に関する調査をします。とくに都市圏においては、ビジネス街など平日の昼間と夜とでは人口の違いが顕著になります。そのほか、どのような世帯の住人が多いのか、一戸建て住宅が多いのか、集合住宅が多いのか、といった世帯特性なども診療地域を把握するうえで必要な情報になります。地域によっては、電車やバスなどを使う頻度が高いところや、最寄駅からの距離など、アクセスについても重要です。このように、開業する地域の診療圏の調査をすることによって、開業後における医療経営に大きく影響してきますので、その点に注意をしてほしいところです。もし時間があれば、データ分析だけではなく、直接現地に出向き、環境や周辺地域の方々の情報を得るなど、実地調査をすることで、リアルな情報も得られますので理想的といえます。
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【Q3】経済的なことを考えて、郊外の住宅地にある自宅を改装し、1階部分に医院を増設しようと考えています。何か問題でもありますか。
【A】医院開業は色々な形態が考えられます。大別すると、さまざまな医療機関が入っている医療ビル、一つの建物のワンフロア内に複数の診察所が入っている医療モール、ショッピングモール内に複数の診療所が入っているケース、独立した戸建の診療所に複数の診療所が入っている医療ビレッジなどです。質問者の場合は、単独で診療を行うケースで、しかも自宅兼用という形態を考えているとのことです。自宅と診療所を兼用しているケースはよくみかけますが、資金面からみるとたしかに経済的かもしれません。ひとつ気になるのは、ご自宅が郊外の住宅地だということです。住宅地であれば、診療圏として考えた場合、一世帯あたりの人口は多いと推察できます。とくに高齢者などが多い地域もありますので、診療科目によっては需要が出てくる可能性はあるでしょう。しかし一方で、共働き夫婦が増えていますので、平日の在住率はあまり高くないかもしれません。たいていは、就業先の近くの医療機関を利用するケースも多いので、自宅近辺の医療機関の利用率は高くならないおそれも出てきます。また、郊外の住宅地ですと、駅からのアクセスはどうなのか、駐車スペースは確保できるのかどうかも、医院経営にとってはとても重要な要素になります。さらに、医院に対して認知されづらいとか、調剤薬局が付帯しない、医院拡張が困難などのデメリットもあります。開業のための資金を抑えるのも大事なことですが、開業の場所をどうするかは医院経営に影響を与えますので、資金面以外の利便性や、周辺環境の人口動向などにも注意を払うことが大事でしょう。
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【Q4】友人数人と資金を出し合い、医療モール形式の医院を開業しようと思います。医療モールの開院にともなうメリット、デメリットはなんでしょうか。
【A】ひとつの建物のなかにワンフロアを借り切って複数の診療所が設けられた形態を、医療モールといいます。メリットとしては、複数人で資金を出し合って開業することから、初期投資が比較的低くすむということ、医院としての特徴をだしやすい、各診療所の連携がしやすい、地域に定着しやすいなど、単独による開業にくらべてメリットは多いといえます。また、同一場所で各科目の診療が受診できますので、患者さんにとっては移動する手間も省けますので、ちょっとしたコミュニティスペースになる可能性は高いといえます。しかし、複数人で開業することから、単独とは違った難しい面もあります。たとえば、診療所の一つに悪評が出た場合に他の診療所にも影響を及ぼす、診療所の広さの制限がある、導入する設備の制限を受けやすい、医院拡張が困難などのデメリットも併存します。人間関係がうまくいっている状態ならばいいですが、もし悪化してしまった場合、一つの診療所が抜け出すとそこだけ空きがうまれます。そこに再度、医療機関が入ればいいですが、まったく違った業態のテナントが入ってしまうと、初期の医療モールとしての特徴が出せなくなります。ここが、単独との大きな違いといえましょう。
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【Q5】開業予定地域に、同一の診療科目の医院のほか、総合病院もあることがわかりました。競合他院が多いとわかっているならば、開業地域を変えたほうがいいのでしょうか。
【A】開業しようとする地域に競合他院がある場合もあります。どれだけの数の他院があるのかはわかりませんが、もっとも大事なことは、競合他院の患者数や診療時間、地域の人たちの評判などの情報を得ることではないでしょうか。統計データのうえでは同一地域内に数件の同一診療科目の診療所があったとしても、実際に機能しているのかどうかまではわかりません。もしかすると、看板だけは出ているものの、ほとんど廃業状態だったり、評判があまりよくないことから他の地域に受診しているという住人の声もあるかもしれません。実際にある地域に開業した医院では、同じ科目の診療所があったにもかかわらず、あまり評判がよくなかったために新規開業した診療所に患者さんが押し寄せた、というケースもあります。とくに専門医の場合には、地域でニーズがある科目もありますので、統計データだけを鵜呑みにしないほうがいい場合もあるのです。こうしたことからも、診療圏の調査は必要になってくるのです。